江戸時代からまだたったの150年。この間の時代のせわしない移り変わりの中で、温泉までも翻弄させられ、もみくちゃにされてきた観があります。かっての湯治場は一泊の遊興の場に変わり、そのあげく温泉地はとうとう行楽地と同義語になってしまいました。
しかし、そんな風潮の陰で「生きていくうえで温泉だけは欠かせない」ーーこう考える方々によって日本の温泉は、湯治場に始まるその原点を守り伝えることができたのだと思います。
湧き出る温泉が在り、人々が集う。湯を守る者の役割が生じ、湯客と湯守との気持ちが通い合う場所が生まれた。これが湯治場の成り立ちでした。それはとても自然な姿に思えます。それゆえにーー
老いてゆく人も活きのよい兄ちゃんも赤ん坊も分け隔てなく、湯の中ではみな一緒(やがて尽きる同じ命)と感じることができた瞬間、温泉は芯からその効能を発揮してくれることと思います。
日本人はずっと大切にしてきた人と自然との接点、その一番おだやかな場所が温泉です。そこから新しい時代の共生の文化が湧き上がることを信じて、これからもこの湯治郷を守り続けたい。私たちはそう願っています。(湯治郷の瓦版 通巻52号 臨時増刊 特集 「湯守りのしごと」より引用)

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